暗号通貨の2018年の動き考えてみた

先日、開催された「Beyond Blocks Tokyo Summit 2018」というのに参加して来たよ。「Summit」っていうと会議っぽいイメージあると思うんだけど、どちらかというと大規模なミートアップだよね。

過去に「Summit」と銘打ったイベントは「AWS Summit 2017」に参加したことはあるんだけど、流れとしては基調講演として開催者の思いを聞いて、その後は各スポンサーだったり、主催者が依頼した人が事例紹介をする。「〜を作りました。」とか「〜をどうやったのか?」みたいな感じ。

その他にはスポンサーした会社がブースを出して、自分達の取り組みを直に説明したりする。今回はコーヒーと軽食が随時出ていたけど、AWSの時なんかはビール他のアルコール飲料とかも出ていて、言ってみれば技術的で難しい内容をお祭りっぽくわいわいやろうみたいな感じで、結構好きです(∩・∀・)∩

当日どんな話があったのか気になる人はSNSでタグ「#bbtokyo2018」で検索すれば、色々な人がつぶやいているし、メディア関係者が記事を書いていたりするので、実際にどんな話があったかは僕は書かないです。

通常このたぐいのイベントだと、既に成果を出している人が事例紹介しての宣伝なんだけど、やっぱりそこはまだブロックチェーンって黎明期なんだろうなという感じで、こないだプロダクトを出しましたとか、これからサービス出すよとか、どちらかというとICOや上場したばかりのICOが宣伝する場に近かった。

AWSのSummitと比較しちゃうと規模は1/10ぐらいだと思う(感覚です)。でも、AWS Summitも最初の開催は2011年頃で、規模も今よりも全然小さかったはず。5年後とかにブロックチェーン関係のSummitもすごい大規模になっていたら、今参加したのもいい思い出になりそう。

それで、この「Beyond Blocks Tokyo Summit 2018」で話を聞いてICOについて色々考えたことがあるので、そのことについて書いておこうと思います。

IPO、VC、ICOそれぞれの特徴について

とにかくみんなが話す内容で多かったのは、ICO(Initial Coin Offering)について。「ICO参加してね」だったり、「ICOとVCについて」だったり、「ICOとIPOについて」だったりと色々な切り口でICOについての話があって、いい意味でも悪い意味でもICOは注目されているんだなと思います。

ということで、「IPO」「VC」「ICO」とそれぞれの特徴について考えてみようと思います。

専門家ではないので、個人的に調べたこととそこから考えたことです。

IPO(Initial Public Offering)とは何か?

株式上場とは

株式上場とは、同族や一部の特定株主により保有されていた会社の株式を、いつでも誰でも自由に売買可能な状態にすることです。英語で「Initial Public Offering」と訳されるため、一般にその頭文字を取って「IPO」と言われます。

引用:株式上場とは~【IPOの基礎】 – 会計の専門家集団 アガットコンサルティング

小難しいことは置いておいて、素人的な理解ではIPOには以下の特徴があると思う。

  • 新たな資金を調達できる(公募株式の場合)
  • 世間の評価による価値の流動化(株式の金融商品化)
  • 会社の信用・知名度の向上

で、これはIPOを実施したあとに期待できる効果だけど、IPO実施にこぎつけるまでがまた大変なの

第207条
本則市場への新規上場申請が行われた株券等の上場審査は、新規上場申請者及びその企業グループに関する次の各号に掲げる事項について行うものとする。
(1) 企業の継続性及び収益性
継続的に事業を営み、かつ、安定的な収益基盤を有していること。
(2) 企業経営の健全性
事業を公正かつ忠実に遂行していること。
(3) 企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性
コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され、機能していること。
(4) 企業内容等の開示の適正性
企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること。
(5) その他公益又は投資者保護の観点から当取引所が必要と認める事項

引用:有価証券上場規程(東京証券取引所)

うーん…w

単純な理解で書くと、”既に事業が安定していて今後も成長が見込める” 場合に、IPOを実施することができる。で、上場の準備から実際に証券取引所に上場するまでには、資料の準備や審査通るのに3年〜5年ぐらいを見込むらしいです。

ということは、IPOというのは会社を立ち上げて軌道に乗せたあとで、更に事業を拡大するために、外部から面倒な審査を通して、資金調達をする方法ということになる。

じゃあ、そんなに時間もかけられないし、現時点では事業も安定していないというときはどうするか?の解決方法の一つがVCなんだと思います。

VC(Venture Capital)とは?

ベンチャーキャピタル(venture capital、略称:VC)とは、ハイリターンを狙ったアグレッシブな投資を行う投資会社(投資ファンド)のこと。主に高い成長率を有する未上場企業に対して投資を行い、資金を投下する。経営コンサルティングなどを提供し、投資先企業の価値向上を図る企業も存在する。担当者が取締役会等にも参加し、経営陣に対して監視・コントロール・指導を行うこともある。事業会社が保有するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)にはベンチャーとの買収や業務連携を目指したものも多く、必ずしも投資に対するハイリターンを求めているとは限らない側面もある。

引用:ウィキペディア(ベンチャーキャピタル)

IPOではない資金調達の方法はVCに限らず、いくつかあると思います。とりあえず思いつく限りで以下かなと思います。

  • 自己資金から出資
  • 親族や知人からの借入
  • 国の制度や助成金
  • 銀行、信用金庫からの借入
  • 企業からの出資
  • VCからの出資
  • クラウドファンディング

僕の親は自営業で、1972年に開業しているのだけど、当時だと会社を設立するだけでもそれなりに費用が必要で、自己資金で足りない分は親や知人に出資を頼んで回ったらしいです。

当時は ヒト・モノ・カネ と言われていたように、モノへの投資もかなりの資金が必要だったみたい。町工場だったので一つ数百万〜数千万かかるような機械を10個以上、それを置く場所として工場建てるために土地と建物が必要だった。

数年の間、安定して事業を継続していれば、新しい仕事も増えるし仕事が増えれば設備投資として機械の購入や、新たな機械を購入するならもっと広い土地が必要になってくる。また、初期に購入した機材も一定の年数が経過すれば故障率が上がるので、買い換えが必要になる。事業が広がってくると、初期の頃は自己資金や親族からの出資だけで仕事を回せていたが、次第に追加で資金が必要になってくるので、銀行や信用金庫からの借入だったり、初期に出資してくれた株主の人達から追加で資金援助をして貰っていた。

そう考えると、最初に資金がないと事業ができないし、実績のない新しいことにチャレンジしようと考えた時に、いきなり大口の借入するのは債務が発生してしまうためリスクが高い。実績や担保がなければ銀行も貸してくれない。ただ、そうするとどうしても手堅く事業を進めていくことになるし、事業を大きくするのに自転車操業に近い形式になりがちでなかなかイノベーションが起きない。

それに比較すると、VCは返済の必要がない資金を提供し、求めるリターンは会社の事業が拡大してIPOによるEXITだったりするので、事業主は返済を気にせず資金調達ができるし、出資したVC側も事業が良い方向に進むように手伝うのにWin-Winの関係を築くことができる。

ただ、裏を返せばVC側は事業に対して口出しをしてくるということなので、銀行から借入する場合よりも、事業主の自由度が下がるという特徴があると思う。

返済の必要がないという点ではクラウドファンディングも同じだけど、クラウドファンディングの場合は明確にリターンを決めて実施することが多いと思う。クラウドファンディングはどちらかというと、次のICOに近いかなと思います。

ICO(Initial Coin Offering)とは?

ICO(Initial Coin Offering:イニシャル・コイン・オファリング/新規仮想通貨公開)とは、資金調達をしたい企業や事業プロジェクトが、独自の仮想通貨を発行/販売し、資金を調達する手段/プロセスのことを指します。投資家には「コイン」や「トークン」と呼ばれるデジタル通貨(資産)を購入してもらい、原則として対価は支払われません。別名「クルドセール」や「プリセール」、「トークンセール」などとも呼ばれ、株式を利用した従来の方法(IPO:新規株式公開)以外の資金調達手段として注目を集めています。

引用:ICOとは何か? ビットコインなどの「仮想通貨」使った資金調達方法の基礎を解説

資金調達をするために、独自のトークン(暗号通貨)を発行し、出資された金額に応じてトークンを発行するという方法。クラウドファンディングに近いけど、リターンとなるのは発行されたトークンのみ。「トークンを持つことでどんなリターンが期待できるのか?」については、発行者によって自由に設定できるのでこれで全部とは言えないが、以下のようなリターンが期待できる。

  • トークン保有率に応じて定期的に分配が行われるタイプ
  • トークンを使うことでサービスを受けるタイプ
  • トークンを送金・決済手段として利用するタイプ

何かしらリターンやそれを利用したサービスを用意するとなると、クラウドファンディングに近いんだけど、トークンによっては明確なリターンを何も用意していないものもある。

それに加えて、リターンの有無に関わらず、またプロダクトの有無に関わらず、暗号通貨取引所へ上場させることができる。特にDEX(Decentralized EXchange)になると、上場という概念すらなく、トークンが発行されればすぐに取引ができる。

ICOがクラウドファンディングに近くて、他の資金調達手段と違うのは、募集するのに当たって明確な手続きはなく、集めた資金を返済する必要はない。また、VCのように1箇所からの出資ではないので、事業に大きく口を出してくる人がいないため、事業主の自由度も高い。株式と違ってM&Aによる買収が行われる心配もない。

これだと、ICOを実施した人だけに利益がありそうだけど、ICOに参加した側にもトークンを売却して利益を得るという選択肢がある。ICOに参加することを選ぶのも自由だし、トークンが上場してICO時点より高値になったらさっさと売り抜けてしまうのも自由。ICOに参加できなくて後からその事業に惚れ込んだ場合も、取引所でトークンを購入できるし、なかなかプロダクトが出ないから愛想を尽かして売り抜けることもできる。

2018年は各国でICOの規制が議論されると思う

「と思う」というかすでにされている。

ICOは上に書いた通り、募集する側も参加する側も自由度が極めて高いので、まあ簡単に詐欺ができるんだよね…

トークンの発行なんて、技術的なことだけに限定すれば一日かからずに発行できるので、それっぽいホームページを作ってホワイトペーパーをコピーして、将来の展望をまるでみんなが思う理想郷のように謳ってしまえば、プロダクトなんて何もなくても簡単に資金を集めることができちゃう。

だからこそ参加する側の自己責任なんだけど、過去に存在した類似の金融商品や技術的なことをあまり知らない人からすると、トークンが発行されたこと自体が「保有した」という安心感に繋がって信用をしてしまう…とこんな単純な例だけではないけど、とにかく煽れば買ってしまう人が多かったし、結果として上場しても価値が付かなければ騙されたと思ってしまう。そもそも上場する気がないプロジェクトとかもあるよね。

「Beyond Blocks Tokyo Summit 2018」の中で話が出てきた「tZERO」というプロジェクトは、SEC(アメリカ証券取引委員会)と組んで、ICOを証券と同等の扱いとし、さらに既存の証券もトークンに置き換える活動をしているようだった。また、日本も2018年4月10日に「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第1回)が行われている。

Summit登壇者の意見や、ネットでの意見を眺めていても、概ね全体的な方向性は「ICOはIPOと同じ規制がされていくだろう」という見解が多い。僕は、実際にそうなっていくだろうなというのと同時に、今までのように規制と関係ないところで募集がされるICOもまた増えていくと思っている。

結局のところ、ICOというのは誰に断る必要もなく、自分自身が主導すれば実施が可能なので、規制が強化されるなら、規制がない国に移動してしまえばどうにでもできると思う。

ICOの規制が強化されることによる影響

2017年10月〜12月にかけてBTCやETH、他のアルトコインが高騰したのは、半分ぐらいはICOの影響なんだろうなと思っている。

以下はICOの価格とプロジェクト数のグラフ。棒グラフは集まった資金(USD換算)で、線グラフはICO期間が終了になったプロジェクト数。全てのICOを網羅は出来ていないと思うし、スキャムだと断定されたものも含まれていないだろうから、これで全部とは限らない。

ICORating Weekly Report №8より

こちらは上のグラフと同じ期間でのBTCの価格推移。調達金額が多かった2017年6月、2017年9月、2017年12月に枠を入れてます。

CoinMarketCapより

こちらは同様にETHの価格推移。

CoinMarketCapより

いやー。並べてみたけど、あまり関連性がわからなかった(笑)

何を考えたかというと、結局のところ各種暗号通貨の価格は需要と供給のバランスで決まると思う。需要に関しては現状で暗号通貨で支払いができるサービスはそれなりにあるけれども、まだまだ経済を回す程ではないと思う。となると、「暗号通貨を求める大きな需要は何か?」を考えると、現状では投資(ICO)と投機(FX)なのだと思う。

PoW通貨(BTCのことだけど)は、基本的に外的要素がなければハッシュレートに従って価格が上がると思っています。それは一番確固たる需要がマイナーが法定通貨に変えなければならない価格であり、それを下回る場合は恐らくマイニングに近い人達からの、大きな買い圧力が入ると思います。損益分岐点はわかっているだろうし、安く買えるなら残高増やしておきたいと思うんだよね。

となると、2017年の後半の値動きはかなり想定外ではあったものの、その要因は2017年前半から始まったICOへの投資と、かなりの金額が投資されれば上場したICOの値上がりによる「億り人」と称した投機熱の上昇と、高レバレッジによるマネーゲームが、上がれ上がれという人々の願いで法定通貨建の金額を積み上げたのだと思う。

「ICOの規制が進んでいくとどうなるか?」という予測に立ち返ると、ICO案件自体はそんなにすごい減らないとは思うんだけど、情報が洗練されていくと思うんだよね。簡単にいうと今までと同じ情報取得の仕方をしていた人は、全然情報が流れてこなくなると思う。なんでかというと、真面目にプロダクトを作ろうとしている人程、ドラマチックな構想ではなく手堅い構想を考えるし、そういうICOプロジェクトは、暗号通貨の本質をあまりわかっていない人からすると、”つまらない”と思う。

結果として、ICOに対して流れてきていた資金は今までよりは減っていくと思う。

暗号通貨の価格はどうなるか?

価格の話は責任を持てるものでもないので、あまり書かない方がいいとは思っていても、やっぱり気になるよね(笑)

「ICOの規制が進むから相場は冷え込むのか?」と言われれば、多分しばらくは冷え込むと思う。ただ、現状で言えば既にICOだけが相場を動かす要因ではなくなっていると思うので、なんとも言えない。

各種暗号通貨の価格が変動するとしたら、以下の要因が関わってくるんだろうなと思っています。

  1. ハッシュレート競争
  2. セカンドレイヤーの開発とプロダクトの普及
  3. ICOで資金を集めたプロジェクトのプロダクトリリースとプロダクトの普及

”1” は最も基礎となる暗号通貨の価格を支えるので定常的に上昇を促し、”2” はどの程度で一般に普及し始めるかによるけど、2年〜3年ぐらいかけて徐々に。”3” はすごい数のプロジェクトがあるので一番読めない。

どちらにしろ、暗号通貨に流入していた法定通貨の8割くらいは投機だと思っているので、話題性が低くなってしまえば、「億り人になりたい」とか言っていた人達の熱が徐々に冷めて、資金が抜けていくだろうとは思う。

あとは、各国の株式、先物、債券などの投資市場との兼ね合いかなと思います。

なかなか長いこと書いたけど、面倒なので見返してません!(。・ω・)ノ゙