哲学というのを伝える難しさ

ちょっと前に「その悩み、哲学者がすでに答えを出しています」という本を買って読んでみた。

哲学に関する書籍は、何となく「長くて」「難しい」というイメージがあるので、そんなに積極的には読んだことなかったんだよね。この本に関してはTwitterをみていて流れてきた画像を見ていて、「おぉ!?面白そう!」と思ったので買って見たんだ。

例えばこんな風に各章が始まる。

と、こんな具合に誰しも一度は思ったり思わなかったりするような「悩み」をとりあげて、それに対する哲学者の考えを引用して回答していくという内容。このペースで28個の悩みに答えていく形式で進んでいくの。

ちなみに、”質問内容にその哲学者がした回答” ではなく、著者の方が哲学者の考えを引用して質問に対して著者の方の考えを書いている形式。

読んでいくとやっぱり個人の考えなので、「うーん。どうだろ?」というのも勿論あるし、書籍の中でも「不倫がやめられない」という悩みに対しては、対極する2名の哲学者を出しているぐらい、人によって感じるものは違うんだろうなと思う。

ただ、この本がとても「良いな」と思ったのは、哲学書という分厚くて読むのに時間がかかりそうなものを、つまみ食いできるというところ。読んでいると自分が興味をそそられるものもあれば、いやそれは違うと思うものもある。自分には合わないかもしれない分厚い書物を読む、というのはやっぱり抵抗があったりはする。

そんな哲学者(実際には全員が哲学者ではない)29名の考えを、つまみ食いできるというのは結構有意義だった。一つ一つの章も引用を除けば大体5、6ページぐらいなので、量は多いけどサクサク読めるように考えられていて読みやすかった。

哲学は伝えるのが難しい

読みながら思ったのは、「やっぱり難しいな」ということ。「難しい」といっても、書いてある内容が難しいわけではない。

哲学者の考えをそのまま伝えるのはそんなに難しくないんだけど、結局のところはそれを読んで自分がどう感じたかというのは、自分の今までの経験といったバックグラウンドに沿ってしまうので、自分自身が 良い・悪い と思った理由を、他の人もそのまま 良い・悪い と思うかと言われると、多分同じことを感じる人はほぼいないと思う。

引用の引用になってしまうんだけど…

ニ ーチェがスピノザに出会った (書物の中で 、ですが )ころ友人に宛てた手紙です 。 「僕はすっかりびっくりして 、うっとりとしているんだ !僕には先駆者がいるのだ 、なんという先駆者だろう !僕はほとんどスピノザを知らなかった 、僕がいま彼をもとめたというのは 、ひとつの 『本能的な行為 』であったのだ 。 [ … ]彼の説の五つの主要な点に僕はまた僕の姿をみたのだ 。このもっとも異常な 、もっとも孤独な思想家は 、まさにこの点で僕にもっとも近いのだ 。 [ … ]つまりだね 、高い高い山に登ったときのように 、ときどき僕の息をつまらせたり 、僕の血を流させたりした僕の孤独が 、すくなくともいまは 、二人連れの孤独なのだ 、 ─ ─ふしぎだね ! 」 ( 『ニ ーチェ書簡集 1 』より ) 。

引用:その悩み、哲学者がすでに答えを出しています

というニーチェのエピソードを見て、「わかるわかる。自分と同じ人なんていないんだと思いつつも、自分と一端でも同じ考えを見つけると、なんか興奮しちゃうよね。」と思いながら読んでました。

他の文学と違って、論理的な結論でないだけに、「哲学者の考え」「自分が受けた事」「自分が発信する事」「相手に伝わる内容」がそれぞれで多分違うものになってしまうと思うんだよね。

そう考えると「哲学は伝えるのが難しい」と思ってしまう。正確には哲学者の考えに共感した自分の感情を伝えるのは難しいのか?なんかややこしいw

自分が中学生や高校生の頃に、同じ本を読んだらどう思うかな?と考えると、多分退屈で途中で読むのを辞める気がする。今は面白いと思いながら読めるのにね。

つまみ食いできるのは良いね!

最初にも書いたけど、つまみ食いできるというのは良いねって思った。

というのも、この本を読んで「ダニエル・カーネマン」の章がとても面白かったので、著書の「ファスト&スロー」という本を今読んでいるんだけど、これがまた僕にとってはすごい面白くてしょうがない。
※ダニエル・カーネマンは哲学者ではなく心理学者

それ以外にも、読んで見たいなと思っている人はいるんだけど、そういう風に自分が知らなかったけれども、少し考えを知ることで次に繋がっていくという体験ができるので、こういうつまみ食いできるのは良いね!と思ったよ。

本の構成も読みやすくなるように考えられていると思った。

ただ一つだけ、最初に悩みが書かれていて、本編では哲学者の考えが書かれていて、最後に答えが書かれているんだけど、答えを読んだ時に「悩みってなんだっけ?」というのが何度もあったので、答えと一緒に悩みが書いてあると良いなと思った。